※追記20240212:画像を追加しました(「薬局の『24時間対応』に関する“誤解”と“お願い”」、「かかりつけの活用方法~投資と同じ?~」)。
もう2月ですが…新年明けましておめでとうございます(笑)
アラサー薬剤師@pharmbook93です。昨年から始めたインスタ、ブログなどでの情報発信ですが、おかげさまで少しずつフォロワー様が増えていて、とても嬉しいです!
今回は、かかりつけ薬局・薬剤師に関する記事です。また“かかりつけ”と関連して、薬局の「24時間対応」についても触れていますので、気になる方はぜひご覧ください。
目次
誰でもできる? 「かかりつけ薬剤師」の要件
私はちょうど1年ほど前に、現在の店舗に異動して来ました。そのため、1年が経ったこのタイミングで「かかりつけ薬剤師」として働くことができます。患者様の“専属・担当”の薬剤師になれる、ということです。異動する前の店舗でも経験している“かかりつけ”ですが、その薬局に「1年以上在籍している」という要件(条件)があるために、これまで担当となることができませんでした。
この他にも「かかりつけ薬剤師」にはいくつか要件があります。今回の記事では、そういった“かかりつけ”の要件、他の薬局・薬剤師とどう違うのか、何ができるのかについて紹介していきます!
かかりつけ薬剤師の要件
- 薬剤師として薬局での勤務経験が3年以上
- 薬剤師の研修認定等を取得している
- 医療に関する地域活動に参画している
- その薬局に週32時間以上勤め、かつ1年以上在籍している
上記の他、店舗自体の体制に関する要件もあり、薬局ならどこででも「かかりつけ薬剤師」になれるわけではありません。患者さんへ充分なサービスを提供できる体制がある薬局、充分な経験やスキルを身につけた薬剤師が“かかりつけ”となることができます。
“かかりつけ”ができること
薬やサプリメント、健康食品などを全部まとめてチェック!
種類がどんどん増えている薬やサプリメント。それらすべての飲み合わせ・組み合わせを確認することは、実はすごく困難です。内科はA医院、歯科はBクリニック、皮膚科はC病院などと複数の医療機関にかかられている場合はなおさらです。一人の薬剤師がそれらをまとめて管理・把握することで、安心して治療に専念することができます。
医師が処方する薬に限らず、自分で購入できるようなOTC(市販薬)やサプリメントなども色々なものが存在し、その分、沢山の選択肢ができています。どれにしようか、どうしようか悩まれている時の相談相手が「かかりつけ薬剤師」です。
薬を飲みやすく、使いやすく、そして保管・管理まで
自分のことをよく知ってくれている薬剤師が細やかな所まで把握・配慮して、薬の使用をサポートします。
「種類が多くてよくわからない」、「粉薬が苦手」、「湿布は分厚い方がいい」といった薬自体のことだけではありません。「食事が不規則だけど、必ず食後に飲まなければいけないのか」、「学校や仕事場では薬が飲みにくい」など、一人ひとりのライフスタイルに合わせた薬物治療に貢献します。また、薬には管理や保管方法に注意が必要なものもあります。冷暗所や小さいお子様の手が届かない所に保管する必要があるもの、使用開始の前と後で保管場所を変えるもの、○日単位で使用する期間が決まっているものなど、様々です。
生活・食習慣や嗜好品(アルコールや喫煙など)、車の運転や機械操作、高所作業の有無、薬の得手不得手、学校・仕事の状況、起床・就寝の時間といったことも薬に影響します。そのようなすべてをかかりつけが網羅し、薬で困ることがないようにサポートします。
他の医療従事者とチーム連携
医療では医師や看護師、介護やリハビリのスタッフなど沢山の医療従事者がチームとなって患者さんの治療に携わります。必要に応じて医師に処方の内容を提案したり、入院先の病院にこれまでの薬や経緯などを伝えたり、薬局の外でも薬剤師がお役に立ちます。
特に自宅で療養されているような在宅医療では、訪問看護師や介護・リハビリのスタッフなどとも連携が必要です。そういったスタッフとも情報を共有し、細やかな所まで患者さんの治療に貢献します。
※薬局の「24時間対応」に関する“誤解”と“お願い”
「かかりつけ薬局・薬剤師」を紹介する場合に、多くのサイトなどで「24時間対応します!」という内容が記されています。しかし、実際に現場で従事する薬剤師としては、少し乱暴な表現の紹介が多い印象です。
以前と異なり、近年は薬局でも24時間対応できる体制が求められています。実際、私の所属する会社、店舗でも薬の説明書などに電話番号を載せて、24時間連絡がつくような体制を整えています。様々な対応体制があろうと思いますが、私の会社では、店舗ごとに支給されるスマホ1台を、店舗のスタッフが勤務終了後に持ち帰って対応しています。患者さんから問い合わせがあった場合にはそのスマホにつながり、対応します。ただし、あくまで営業時間外、勤務時間外になるため、四六時中スマホの着信に備えているわけではありません。店舗の時間外にも勤務体制があるようなコールセンターと誤解されている場合がありますが、私が知る限りそういった体制がある薬局はありません。あったとしてもごく少数であろうと思います。
“かかりつけ”として、少しでも患者さんからの要望に応えるために、このような体制をとっています。しかし、すべての要望に応えることは難しいです。緊急を要する場合は、救急外来や119番へご連絡ください。
“かかりつけ”になってもらう手順・費用
- かかりつけになってほしい薬局・薬剤師を見つける
- 所定の用紙に署名をする
- 次回の処方から、かかりつけ薬剤師に薬を渡された際に別途費用が発生する
費用は保険の負担割合に応じて変わります。3割の場合は1回あたり60~100円程度です。この費用で健康に関わる大切な薬をしっかり確認、管理してもらえます!すごくお得な制度ではないでしょうか?
かかりつけの活用方法~投資と同じ?~
最近、一般の方にもNISAやiDeCoなどで『早く始めて、長く続ける』ことが大切とされる投資の話題が取り上げられています。実はかかりつけも同じで『早く始めて、長く続ける』ことでメリットが大きくなります。その理由は、情報量です。
初めての薬局で副作用歴(薬が体に合わなかったような経験)を聞かれて、困ったことはないでしょうか。「昔、風邪薬で発疹が出たことがあるけど、名前など詳しく覚えていない」、「気持ち悪くなったことがあるけど、そもそも薬が原因だったのか自信がない」などということは珍しくありません。しかし、この『副作用歴』という情報はとても重要なもので、特に初めての患者さんには必ず確認するポイントです。よく「小さい時のことだから大丈夫」を思われる方がいますが、薬によるアレルギー反応は大人になっても生じ、時には重篤な体調悪化を引き起こす恐れがあります。
そこで『かかりつけ』です。幼少期から早く決めておくことで、合わなかった薬の情報を正確に記録しておくことができます。大人になるまで長くかかりつけ薬局を決めていれば、幼少期の経験であっても薬の適正をチェックしてもらえます。記録をもとに医師へ問い合わせ、合わない薬を使用することがないよう、体調悪化を防ぐことができます。
また、かかりつけ薬局を決めたら、その薬局へすべての処方箋を提出することが好ましいです。A内科、B歯科、Cクリニック、どこからの処方箋もかかりつけ薬局へ提出してください!他の薬局に提出できないわけではありませんが…かかりつけ薬局にすべての処方箋を提出する=薬をまとめて管理、把握してもらうことが、この制度を最大限に活用するポイントです。薬の情報と患者さん自身の情報をすべて網羅して、薬物治療、健康に貢献することが、かかりつけ薬局・薬剤師の役割です。
そして当たり前なのですが、意外と注意していただきたいこと。かかりつけ薬剤師は患者さん1名に対し1名だけです。「かかりつけ」という言葉通り、別の薬局にもかかりつけ薬剤師を決める、ということはできません。保険の請求に影響する恐れがあるため、引っ越しなどで他にかかりつけを変更される場合は、お申し出ください。
かかりつけ“薬剤師”と、かかりつけ“医師”
異動する前の店舗で私一人が担当していたのは、100名以上の患者さんです。正直それだけの方を担当することは大変でしたが、より深く患者さんの治療に貢献できることに大きなやりがいを感じてもいました。一方で薬剤師の機能をご理解いただけていないために、お役に立てなかったことも少なくありません。
「かかりつけ」と聞くと医師、かかりつけの“先生”をイメージされることの方が多いかもしれません。医師であれば「100名なんて少ない人数」と思われるかもしれませんが、薬剤師とは簡単に比較できない点があります。それは専門とする診療科の存在です。医師は基本的に専門の科で限られた薬を取り扱っています。しかし薬局の薬剤師は、すべての診療科の薬を受け付け、取り扱います。医師が専門外の薬をわかっていないとか、薬剤師が大変だとか、そういったことを伝えたいわけではありません。治療方法は薬の他にも様々ですし、医師は専門外の薬でも理解し、組み合わせの適正を判断するスキルを有しています。
ただこれまでの経験で痛感していることがあります。それは、複数の診療科、医療機関で薬を出されている場合、1つの薬局・薬剤師がまとめて確認・管理することが一番だということです。もちろん薬局・医療機関の立地や生活、仕事、時間の都合など、難しい点があることは重々承知しています。それでも、1つにまとめる、“かかりつけ”にしてもらうことが、どれだけ薬の安全につながるのか、適正な使用に貢献できるのかと、かかりつけ薬剤師を経験して感じています。お薬手帳がこれだけ周知されていても、まったく同じ薬が重複していたり、一緒にしてはいけない薬が出ていたり、使い方が間違っていたりすることが多いです。実際に誤りが生じています。
別途、費用が発生する「かかりつけ“薬剤師”」まで決めなくても、かかりつけ“薬局”だけでも決めていただくことで、店舗内で情報が共有され、かかりつけの機能を発揮できる部分があります。最近はスマホのアプリで、簡単に処方内容を送ることができます。昔に比べれば、薬局をまとめやすくなっているはずです。アプリが苦手でも、薬局で操作方法を懇切丁寧にお伝えします。医療機関をまとめることはできなくても、薬局・薬剤師をまとめることは可能です。ぜひ「かかりつけ薬局・薬剤師」を選んでください!